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次の文を読み〔問題 1〕〔問題 2〕〔問題 3〕に答えよ。
50歳の女性。2年前に左肺癌に対して左肺全摘出術を受け、以後、外来受診を継続していた。肝臓と骨盤への転移が認められていたが、本人が在宅療養を希望していたため、現在は訪問看護を利用しながら生活している。52歳の夫、24歳の娘と同居している。家族は、本人の希望する在宅で最期を看取りたいと考えている。臀部から両下肢に疼痛があるため、モルヒネ20mgを朝、晩に内服してコントロールしていたが、2週間前より疼痛が増強し、ペインコントロールは不良であった。診察後、本日よりモルヒネ40mgを朝、晩に内服することとなった。
〔問題 1〕 モルヒネ増量にあたっての看護で正しいのはどれか。
1.呼吸数の増加から過換気を起こさないか観察を行った。
2.便秘に対して整腸剤の増量を行った。
3.眠気に対しては4、5日間、様子をみた。
4.悪心・嘔気に対する薬剤の使用はしなかった。
〔問題 2〕 今後、患者の容態悪化を予想して不安があるため、家族から死に向かう状態について知りたいとの訴えがあった。訪問看護師の死の前兆に関する説明で誤っているのはどれか。
1.「話しかけても反応がないくらい意識を消失します」
2.「手首で脈拍を確認しても触れなくなります」
3.「口を閉じて胸部で呼吸しているように見えます」
4.「尿がほとんど出なくなります」
〔問題 3〕 「話かけても目を開けませんが、興奮しているときもあって一体どうしたのでしょうか」と連絡があり、医師とともに往診したところ、腹水貯留が認められ、肝性脳症と診断された。看護として正しいのはどれか。
1.腹水の穿刺と吸引の準備を行った。
2.利尿剤を投与し、家族に尿量を確認するよう指導した。
3.家族には高蛋白食の食事を準備するように指導した。
4.抗生物質の投与を行った。
| 1. × | モルヒネは投与前と比較して呼吸数の減少、換気量の減少や舌根沈下に伴う換気不全などを含めて、呼吸抑制があるといわれており、モルヒネ開始時、増量時には注意が必要ではあるが、その発生頻度は数%程度である。呼吸状態の観察は重要であるが、呼吸数の増加、過換気を呈する可能性は低い |
| 2. × | モルヒネには腸管の輪状筋を収縮させて腸蠕動を低下させる作用と、肛門括約筋の緊張を高める作用があることから、投与開始から便秘を発症し、長期投与では便秘は全てにおこるといわれている。対策としては整腸剤ではなく緩下剤をモルヒネ内服と同時に開始し、排便状態を見ながら増量したり、減量したりして排便コントロールを図る。 |
| 3. ○ | モルヒネの投与開始時、増量時には眠気をもよおすことが多いが、眠気に対する耐性の出現は早く、3〜5日間様子を見るだけで、眠気は軽減、消失するのが一般的である。除痛が十分ではあるが、眠気によって日常生活が障害される場合にはモルヒネを減量したり、減量が困難な場合には朝に覚醒作用のある薬剤を内服する事がある。 |
| 4. × | モルヒネの副作用で便秘の次に多いのが嘔気、嘔吐である。モルヒネには第4脳室底の嘔吐中枢への刺激作用があるため嘔気が出現し、患者の不快感も強い。食欲低下、栄養状態の悪化を防ぐためには中枢作用の制吐剤、消化管に作用する制吐剤が用いられ、内服が困難な場合には、注射や座薬によって確実に投与する必要がある。 |
| 1. ○ | 在宅ターミナル患者の家族にとって、これから起こる死への現象について知りたいと思うのは当然である。死の前兆である意識消失は家族にとってもショックな出来事である。意識消失の可能性があることを事前に伝え、心の準備ができるように関わる必要がある。 |
| 2. ○ | 死の前兆として血圧低下や、それに伴う橈骨動脈の不触知、四肢の冷感などがあげられる。常に患者に接している家族は、四肢の冷感や脈圧の低下などに気がつく場合もあり、不安が募ることが多いので事前に説明しておく。 |
| 3. × | 死の前兆としての異常呼吸では、口を閉じて胸部で呼吸する状態ではなく、下顎がおちて口が開いたままとなる下顎呼吸や鼻翼呼吸、肩呼吸などである。異常呼吸の出現時には意識低下していることが多いが、家族には患者が苦しんでいるように見え、不安と恐怖が強くなるため、事前に十分に説明しておく。 |
| 4. ○ | 心拍出量の低下からくる腎血流量の減少、多臓器不全に伴う腎機能の低下などから、死の前には尿量が極度に減少し、無尿状態に陥る可能性が高い。在宅では排尿回数の減少、1回尿量の減少を家族が目のあたりにして不安になるため、事前に説明する。 |
| 1. × | 転移性肝癌による肝機能低下からNH3(アンモニア)が処理しきれず、また腹水にNH3が貯留しているために肝性脳症をおこしていると考えられる。腹水中には血液中よりも多量のNH3が貯留しており、急激に腹水を除去することはNH3の血中移行を促進し、症状の悪化に繋がるため、腹水穿刺と吸引は行ってはいけない。 |
| 2. × | 利尿剤の投与によって急激に循環血液量が減少すると、それに伴い肝血流量や腎血流量も減少するため、体内NH3は増加し、症状の悪化をまねく危険性がある。利尿剤の投与はあまり行わない。 |
| 3. × | 肝性脳症ではタンパク負荷を減少させるために、食事は高タンパク食ではなく、低タンパク食に変更する。ただし、カロリー制限は行わない。経口摂取量の確認とともにモルヒネ内服による便秘もタンパク負荷の増加につながるために、排便パターンを確認し、便秘を解消する必要がある。 |
| 4. ○ | 抗生物質を投与して消化管内で有害窒素化合物を生成する腸内細菌の増殖を抑制したり、ラクツロースと微温湯で浣腸を行い、腸内のpHを下げて下痢をおこさせたりして消化管内を浄化し、高アンモニア血症の緩和をはかる。 |
1)モルヒネの副作用としては、便秘、嘔気・嘔吐、眠気、混乱・幻覚、ふらつき感、口内乾燥、発汗、掻痒感、呼吸抑制がある。
2)主な身体的な死の徴候
| 皮膚の色の変化(蒼白または土色) |
| 爪や唇の色の変化(暗紫色または白色に近い色) |
| 呼吸の変化(浅呼吸、喘鳴、鼻翼呼吸、下顎呼吸など |
| 脈拍の変化(微弱頻数、不整脈) |
| 四肢の冷感やチアノーゼの出現 |
| 反射の減退や消失 |
| 血圧の低下 |
| 意識の低下 |
| 失禁 |
3)肝性脳症となった場合、安静(肝臓・腎臓に流れる血液の量を増やす)、食事療法(動物性タンパク質の摂取を控えめにする)、薬物療法(腸内の有害な細菌)が基本である。